口腔育成

子供のお口の中を見ると、かみ合わせの問題に目がいきがちですが、かみ合わせは成長の結果です。

乳歯の歯並びに問題があるということは、その背景に身体の成長の問題を抱えているという事です。

最近は、正常な乳歯の歯並び(隙間があって上下が当たってすり減りがある)は1割程度しかなく、deep biteと言われる深く被さるようなかみ合わせが多くなってきました。脳神経系が大きく発達する乳歯列期(3歳〜6歳)に、この様なかみ合わせでは質の良い睡眠をとることが出来ず(寝起きが悪いなど)夜間の口呼吸にも繋がり、身体の様々な成長不足を引き起こします。

出来るだけ早い時期からお口の成長を促し、乳歯が生え揃ったら、身体の成長を後押しするための口腔内装置を夜間使用する事で、質の良い睡眠、呼吸が出来るようになります。

また、小さい頃から左右バランス良く身体に適度な負荷をかけることをお勧めしています。

赤ちゃんは優しく身体を触ってあげて(ベビーマッサージ)(*1)、成長を楽しんで急がず、はいはいする様になったらしっかりはいはいさせてあげてください。離乳食はちゃんと座れる様になってから、お家の人と一緒に楽しく手づかみ食べもお勧めです。歩ける様になったらたくさんお外でお散歩しましょう。歩くことは身体のバランスを整えるのにとっても大切です。

当院では、お子様のお口の中から成長発育を支える治療を行なっています。

お子様のむし歯予防について

お子様のむし歯予防で一番大切なことは、生活習慣の確立です。

日中たくさん遊んで夜は早めに寝て朝は日が登るとともに起きる。このリズムが作られることで、身体の成長が促され、お口の中の環境も整っていきます。お子様の食事はご家庭の食事を反映しますから、ご家庭の食習慣もとても大切です。ヒトの体はすべて食べたもので出来ています。身体の免疫を司る腸内細菌が元気になるような食事をお勧めしています。気になる方は一度食生活の見直しをする事をお勧めします。

次に大切なことは、歯磨きの習慣をつけることです。

出来るだけ小さい時からマッサージする様に優しくお子様のお口の中を触ってあげましょう(ベビーマッサージの口腔内版)。歯が生えてきたら、優しく表面を拭ってあげましょう(ガーゼでもOK)。嫌がるほど強い圧をかけないように注意してください。自分で歯磨きできるようになってきたら、優しく仕上げ磨きをしてあげましょう。仕上げ磨きが親子の楽しい時間になりますように。

歯周病について

日本人成人の約8割は歯周病の問題があると言われています。

が、歯周病菌がお口の中に住み着いて起きる病気ですので、予防は可能です。

歯周病菌は、思春期以降に家族や身近な人から唾液などを介して感染し、条件が整うと定着し発症します。

家族内で感染することがほとんどですので、家族皆で予防と治療を行うことをお勧めします。

成人のむし歯について

成人のむし歯は、ほとんどの場合、かみ合わせの不具合や身体のバランスを取るための上下の歯の当たり具合の問題から生じます。部分的に歯周病が悪化したり、親知らずが腫れたりするのも同じ原因です。

むし歯、歯周病を引き起こす細菌のすみかになるプラークを排除することはもちろん大切ですし、お手入れしやすいように治療することも大切ですが、かみ合わせの不具合が生じていないかチェックし、バランスを取ることが根本的な治療になります。

顎関節症について

咬み合せは全身のバランスをとるために重要な役割を担っています。

重力下で身体が倒れないように、ヒトは無意識に揺れながらバランスをとっています。

5Kgの重い頭がてっぺんに乗っかっている私たちの身体はヤジロベエのようで、下顎はこのバランスをとる役割をしています。

歯は食事の際に咀嚼する役割がありますが、食事以外の時には、身体が倒れないようにバランスをとる役割があります。バランスに問題があると、かみしめ、歯ぎしり、食いしばりによって、顎関節症を引き起こしたり、いろいろな全身症状や不定愁訴の原因になることもあります。

当院では、かみ合わせと全身の重心バランスをチェックし、できるだけバランスの良いかみ合わせと姿勢に整えられる事を目的に治療を行っています。

おまけ

歯は、食べる(咀嚼する)ために大切なだけではなく、重力がある地球上で身体を支えるために重要な役割をはたしています。生涯健康に過ごすために出来るだけ良い状態で残していきたいものです。

そのためには、普段から上下の歯が無駄な当たり方をしないような姿勢と呼吸の仕方が大切です。
体軸を整え、舌が口蓋に吸盤の様に着くことによって、下顎は無理なく脱力し、鼻呼吸することができます(*2)。古武術にも通じるこの様な身体の使い方を普段から生活に取り入れる事をお勧めしています。

参考図書
(*1)おなかにいるときからはじめるべびぃケア 吉田敦子著
(*2)舌は下でなく上に 宗廣素徳著